なぜ、発音に興味を持ち始めたか?
私が高校生の頃、生まれて初めて日本を出て、アメリカのアイオワ州にホームステイをした時に、自分の英語の発音が全く通じず、アメリカ人の発音が全く聞き取れず、非常に困っていました。必死でアメリカ人の発音を真似て、自分ではうまく真似できているつもりでも通じないのです。まさに途方にくれていました。そんな矢先、アメリカ人の先生からある指導法を聞き、とても感動し、なんと通じないということはほぼ無くなり、通じない時でもその原因を自分で理解して調整できるようになったのです。このことにあまりに感動しました。それがきっかけで、全ての日本人学習者に伝えなければいけないと決めました。
しかし、フォニックスは本来英語の発音を既に知っている英語ネィティブが、つづりを理解するためのものです。英語の音がいくつあるのかといった根本的な部分を知らない日本人がいきなりフォニックスを始ても、混乱するかもしれません。しかも残念なことに、英語には、日本語の50音表や中国語のピンイン表のように、全ての音が一目瞭然のまとまった表が無いのです。現に私も、英語の音がいくつあるのかを理解するまでに、相当な年月を要しました。そこで、カナダの大学、大学院で言語学を学び、中国語教育の発音指導を参考にし、日本語の50音表のような一目瞭然の、日本で唯一無二の英語の音の一覧表を作りました。それが、このレモンスクールの原点です。
なぜ、発音は重要なのか?
発音というと、とにかく通じるかどうかが重視されます。確かにこれは最も大事なことで、コミュニケーションが取れなければ非常に不便であると同時に、精神的にもかなり辛いものがあります。しかし見落とされがちなのは、外国語の発音が上手くなると、その言語の処理が圧倒的に楽になるということです。これは、話す、聞くだけではなく、読む、書く場合にも当てはまります。
英語の場合、日本人の多くは、口の動きうんぬん以前に、英語の母音がいくつあるのか、子音がいくつあるのか、どう拍で区切るのか、強勢とは何かといった、根本的な基礎を習うチャンスが無いため、英語の音の聞き取りに苦労します。というか、これらの知識無くして、外国語を聞き取ろうということは自殺行為にも等しいのです。そこで、聞き取る時は、文脈に頼らざるをえません。専門用語を使うと、トップダウンプロセス(文脈などから予測する)に依存し、ボトムアッププロセス(個々の音を把握する)があまり使えない状態です。発音をきっちり理解し、正確に、かつ素早く発音できるようになることで、ボトムアッププロセスが強化され、効率よく外国語を処理することができるようになるのです。
*英語の発音が悪いと、その人の英語力、さらに能力まで低いと判断されがちだというデータがあります。
英語の語彙力が1万語だけど、発音が非常に日本語的な人より、語彙力は3000語でも、発音がネイティブライクな人の方が、将来性があるのではないかと、私は考えています。
英語教育関係トピック
ここでは、私たちの考えを思うままに書かせていただこうと思います。教員にも学習者にも一人一人主義やこだわりがあり、一人一人自分に合ったやり方があるでしょう。私たちは、教員として、学習者として、私たちの意見を書いていくので、それが合う人もいれば合わない人もいる、というスタンスで見たいただければ幸いです。
● World Englishesとジャパニーズイングリッシュ
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● [ə]と[ʌ]の区別を英語ネイティブはできない。[ə]と[ɪ]も区別できない:発音記号の本当の読み方
日本語教育関係トピック(今後の課題)
● ピッチアクセントの指導をどうするか
● 特殊拍は本当に”特殊”なのか
中国語教育関係トピック(今後の課題)
● 中国語のイントネーションをどう指導するか
● 日本人のみならず、中国人にも苦手な人がいる、巻き舌音はどう指導するか
● 中国語(普通話)が母語ではない中国人は、どうやって中国語と自分の母語のバイリンガルになったのか
外国語の発音学習・指導全般に関するトピック(今後の課題)
● ネイティブ発音とはどのレベルを指すか
● 中年以降でもネイティブ発音の習得は可能か?
● 文字が無い言語の発音を、第二言語学習者はどう習得するか