英語のアクセントは「高い、強い、長い」だと思っていると一生習得できない?

 英語の「アクセント」というか「ストレス」「強勢」というと、よく、”Stressed syllables are longer, louder, and higher in pitch than unstressed syllables.” のように言うのを聞きますが、、、こう考えていると、日本人は一生英語のアクセントを習得できないと思います。少なくとも僕はそうでした。もっと根本的な役割を理解しないといけません。一旦気づいてしまえば、超簡単です。

 まず、higher in pitch つまり「音程が高い」ということですが、それはあくまでも下降調イントネーションで言った場合そうなることが多いというだけの話です。英語は声調によって単語を弁別する言語ではないので、高いか低いかはイントネーション次第です。アクセントがあるから高いとか低いとかということではなく、イントネーションがどうだから高いとか低いと考えた方がいいでしょう。

 次にlouder つまり音の大きさですが、牧野武彦先生の「日本人のための英語音声学レッスン」(2005)によれば、アクセントの無い音節の方がアクセントのある音節より音量が大きい場合も少なくなくこれは誤りですらあるそうです。

 最後にlonger つまり長さですが、長さは重要です!やっと本物が出てきました。日本人は長さの調節や聞き取りは得意なので、英語のアクセントではまず長さに注意することです。まず長いことによって、他の現象が決まってくるのです。

 英語のアクセント/ストレス/強勢はよく、日本語のピッチアクセントと混同されます。「英語のアクセントは長い、強い、高い、一方日本語のピッチアクセントは高いだけで長さと強さは無いんでしょ?」のように考えてしまいがちですが、決して断じてそういうことではありません!例えるなら、イルカやエビを魚類だと勘違いしていたり、コウモリや蝶々を鳥類だと勘違いしているようなものです。

 よく「英語は強さアクセント、強弱アクセント、ストレスアクセント」「日本語は高さアクセント、高低アクセント、ピッチアクセント」なんていう言い方もしますが、そもそもこの「◯◯アクセント」というくくりにすることがちょっと違うのではないかと私は思います。外国語教育学会にいた本当に発音が上手い人たちは、このことをよくわかってらっしゃるようでした。例えるなら「犬🐕は哺乳類、カメ🐢は爬虫類、セキセイインコ🦜は鳥類、コウモリ🦇は夜行性類」と言っているようなものではないでしょうか。哺乳類か爬虫類かということと、夜行性か昼行性かということは別次元の話なので、同じくくりにするのはおかしいということです。

 さらに言えば、この「アクセント」という用語が曲者で、(She has an American accent.とかの「なまり」とか「方言」の意味はまた別です。)ストレスのことを指していたり、声調のことを指していたり、はたまた別なものを指していたり、結構バラバラになっています。その時々で何を指しているかを理解しないといけません。

 もう一つ、日本語のピッチアクセントは、声調と強勢の中間みたいに思われていることも多いと思います。しかし、Hyman, L. M. (2009). How (not) to do phonological typology: the case of pitch-accent. Language sciences31(2-3), 213-238.によれば、「ピッチアクセントという体系はなく、日本語のピッチアクセントは声調だ」ということだそうです。私は全くその通りだと思います。このHyman先生の論文は日本の音声学界でも結構有名ですが、なかなか日本人の心には響いていないように見えます。

 結局のところ、英語など何かの言語の強勢を自分で発音できるようにならなければ、論文をいくら読んでもわからないものなのだと、自分自身が実感しています。強勢に限らず、特定の音に関して、自分が発音できない限りは、どんなに論文や教科書を読んでも理解できないものです。これを私は自分で痛感しています。「ピッチアクセントが、声調と強勢の中間」だということは、「哺乳類と夜行性の中間」とか「塩ラーメンとチャーシュー麺の中間」と言っているようなものなのではないでしょうか。塩とかしょうゆとか味噌はタレ、チャーシューとか味玉とかネギとかメンマとかほうれんそうとか海苔とかコーンとかはトッピング、違う次元のものの中間というのはおかしいのではないかということです。

 多くの日本人の頭の中には、どうしても英語のアクセント/ストレス/強勢は、そこを高くするという考えが抜けません。私もそうでした。そこで、アクセント/ストレス/強勢という用語から「高さ」を切り離そうとするのではなく、もう全く別の用語を使って、全く別な役割のものだと思って、新しくやり直すことをおすすめします。中国語からヒントを得ました。こちらで中国語の音を使って説明しているので、是非受けてみて下さい。→ 全て通じる英語の37音表2巻のレッスン13、14。これができるようになれば、通じます。最優先はこれです。絶対面白いです!そして、もっと他の役割を理解して、もっと上手そうな発音に聞こえるためには、→全て通じる英語の37音表4巻を見て下さい。絶対面白い自信があります!(笑)

 

作者:レモンスクール副代表、野北明嗣

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