フォニックスの「アブクド読み」の注意点2:英語の全ての音素を網羅していない
前回の「フォニックスの「アブクド読み」の注意点1:この名称は誤解を招かないだろうか、、、」の続きになります。
※決してアブクド読みが悪いと言っているのではなく、注意点も理解して正しく使い、「効果を最大限発揮しましょう」ということです。
英語の「アブクド読み」は、AからZまでの26文字のEnglish alphabetのそれぞれの文字の読み方のことです。フォニックス(文字と音の対応)の最も土台になる部分です。中学の英語教科書にも、AからZまでの読み方が載っていますね。
ただここで注意しないといけないのは、アブクド読みの26文字では、英語の全ての37音素(北米英語13母音、24子音 方言によって若干違う イギリス英語は18母音)が含まれておらず、しかも26文字の中には音的にはダブっているものもあるということです。これをしっかり理解して使うことが大事です。
これは元々英語のネイティブスピーカーの子供用の指導法です。ネイティブスピーカーは、英語の音素がいくつあるのかを明示的に把握しているわけではありませんが、良質なインプットの量がノンネイティブとは比較にならないので、「いつも発音している音」と「一度も発音したことがない音」というのはわかっています。それが前提で、では自分がいつも発音している音に対応する文字はどれか?を学ぶのが、26文字のアブクド読みになります。
一方私たちノンネイティブは、良質なインプットの量は限られている上に、既に全ての音を日本語の五十音表に当てはめて聞く習慣ができあがってしまっているので、ネイティブのように「いつも発音している音」と「一度も発音したことがない音」がわかりません。そこでノンネイティブは、最初に「(北米)英語には37音ある。全ての単語は37音だけでできている。これ以外の音は使わない。」と習っておくのが、一番効率が良いでしょう。それを把握した上で、英語を聞くと全く違った世界が聞こえてきます。その上で、「じゃあ37音に対応するのは、どの文字か?」とあてはめていくわけです。
フォニックスを日本人がやる時の最大のネックは、「結局英語の音がいくつあるのか把握できない」という点です。ここをカバーしなければいけません。
26文字のアブクド読みでは、母音は5個しかやりません。しかも、結構多くの人が、Aは「ア」、Iは「イ」、Oは「オ」と日本語のルールにしてしまっているのは、大問題ですね。これでは通じないんです。。。そして母音は前述のように13個あるわけですから、あと8個も足りません。
母音字5文字、A, E, I, O, Uには、日本語の漢字の音読みと訓読みのように、それぞれ2つずつの読み方があり、これは多くのフォニックスの先生が強調しています。1つ目を「ロング読み、アルファベット読み」、英語ではlong sounds又はalphabet soundsと言います。問題は2つ目の読み方で、日本では「フォニックス読み」という言い方をする人もいますが、これは私は違うんじゃないかと思います。。。(イチャモンばかりつけているようで申し訳ありませんが、これも日本の英語教育を良くしたいからです!)英語ではshort sounds又はrelative soundsと言いますが、phonics soundsとは言いません。フォニックスは「文字と音の対応」のことですからね。「アルファベット読み」に対する「レラティブ読み」とすべきでしょう。
ただ、アルファベット読みというのは、A, E, I, O, Uの文字の名前と同じなので、そこに含まれているということになるかもしれません。それでもまだ3つ足りません。ここを理解しておかないといけません。ただし3つだけです。それ以上はありません。
次に21文字の子音字ですが、音的に重複しているのが、C、Q、Xです。ただこれらはこれらで、どう読むのかを知っておくのは大事ですが。Cは基本はK又はS、QはK、しばしばQUの形で出てきてKW、Xは基本はKS又はGZ、たまにZ。つまりアブクド読みで学ぶのは、18種類の子音だけで、24子音になるには、あと6個足りないわけです。ここを理解しておかないといけません。ただし6つだけです。それ以上はありません。
アブクド読みの注意点については、よかったら→→あな読みレッスン10.5 フォニックスとは何か?活用法は?注意点は?
日本語には五十音表、中国語にはピンイン表、韓国語にはハングル表、スペイン語にはスペイン語のアルファベット表という、小学生でも理解できるような、整理整頓された表があるのに、英語にはなぜ無いのか?それはやはり、英語の文字と音の対応の複雑さ(一貫性の無さ)にあるからでしょう。なかなか英語の音を、みんなが慣れ親しんだ文字でビジュアル化することが難しいのです。実は日本語のピッチアクセント(「雨」と「飴」のような区別)も、発音アクセント辞典という体系的なものはあるものの、その存在を知らない日本人の方が多いでしょう。平安時代から日本語のピッチアクセントを表記する方法はあったのですが、一般の人たちが使う文字として定着しなかったから、それが今の今まで来ているのでしょう。だから英語に、わかりやすい音の一覧表が無いことも、驚くことではありません。
むしろ世界の言語の大半は、文字を持たない言語です。例えばレモンスクールの代表、董炎林の母国語であるヌンタン語(南通語、南通话)には、オフィシャルな文字はありません。だから、ヌンタン語のネイティブスピーカーはヌンタン語の音の一覧表なんてものは知りません。知っているのは、ヌンタン語をしゃべれる音声学者だけで、その一覧表も中国語で書かれた学術論文に発音記号で書かれているので、そうそう理解できる人はいません。
実は英語にも、アメリカ人やイギリス人の音声学者が書いた、学術論文には、英語の音の一覧表がまとめられています。しかしこれらは元々英語の音がわかっているネイティブには理解しやすいが、日本人がこれらの論文を読んでも、大学で英語の音声学を教えているような先生たちでさえ、簡単には理解できないのです。私も理解するのに何年もかかりました。ヌンタン語の音の一覧表を考えれば、驚くことではありませんね。
しかしそれでは、英語学習者は困るわけです。そこで、私が小学生にもわかるようにまとめたのが、13母音表、24子音表です。よかったらこちらをご覧ください。無料のプレビューだけでも見て下さい。→13母音表、24子音表レッスン。