英語の発音記号/ə/の読み方、レベル1初級者編:99%の人が犯している発音ミス
まず、以前の記事、[ə]と[ʌ]の区別を英語ネイティブはできない。[ə]と[ɪ]も区別できない:発音記号の本当の読み方 でも書きましたが、英語の発音記号の/ə/の発音は、/ʌ/と同じです。両者を変えることによって、単語の意味が変わることはありません。
慣例的にアクセント(強勢)がある所は/ʌ/と書き(例、’up’ のu)、アクセント(強勢)の無い所は/ə/(例、’ago’ のa)と書き分けているだけです。(両者が異音かどうかと言う議論はまた別な記事で書こうと思います。)
余談ですが、英和辞典では基本的にスラッシュを使って/ə/と表記され、中学の英語教科書では基本的に角括弧を使って[ə]と表記されます。音声学では、前者が音素記号(心の音、話者が思ってる音)、後者は音声記号(実際の音声)ですが、辞書や教科書の発音記号に関して言えば、そのような使い分けをしているようには見えないので、気にしなくてよいでしょう。
さて、今日はレベル1なので、/ə/の最も基本的な話をします。99%の日本人がミスしている部分です。まずここを押さえてから、次のステップに進みましょう。
まずレベル1では、/ə/と/ʌ/は、どちらも日本語の「あ」で良いです。細かい注意点は、次のレベル2でお話ししますが、まず口の形うんぬんの前に、最も大事なことを押さえておいて下さい。
99%の日本人が、発音記号が/ə/になっているにも関わらず、
それを無視して、つづりをローマ字読みしています。
発音記号が/ə/だったら、ちゃんと「あ」と読んで下さい。超単純!
口の形がどうとかこうとか考える前に、まずここを守るだけで、大幅に発音が改善します!
口の形、舌の位置うんぬんは、これがしっかり定着してから、次のレベルとして考えます。
例)
● necessary /nés.ə.ser.i/ (必要な)
99%の日本人が「ネセサリー」と言います。(Rの発音に気をつけている人は、結構いますが。)でも発音記号を見て下さい。強いてカタカナで書くなら「ネサセリー」です!「セ」と「サ」が逆です。レベルが上がってきたらアクセント(強勢)とフットのリズムを考えないといけませんが、まずは「ネサセリー」と言うことです。嘘だと思うなら→Cambridge Dictionary のnecessaryのアメリカ英語を聴いて下さい。余談ですが、最後のsaryのaがなぜ/e/かというと、アメリカ英語では’ary’の’a’はしばしば/e/です。例えば’vary’ (様々に変わる)と’very'(とても)の発音はアメリカ英語では同じです。(詳しくはミナ表レッスン31)
● secretary /sék.rə.ter.i/ (秘書)
これも99%の人が「セクレタリー」と言いますが(Rの発音に気をつけている人は、結構いますが。)、/ə/を無視しないで下さい。強いてカタカナで書くなら「セクラテリー」です。嘘だと思うなら→Cambridge Dictionary のsecretaryのアメリカ英語を聴いて下さい。リズムは(secre)(tary)と2フットになるので、まずは何も難しく考えず、「セクラテーリー」と、「テー」をやや伸ばすとイメージをつかめると思います。上の「ネサセーリー」も同様です。
● station /stéɪ.ʃən/ (駅)
これも99%の日本人が「ステイション」と言いますが、/ə/を無視しないで下さい。強いてカタカナで書くなら「ステイシャン」です。(nの発音も注意ですが、ここでは触れません。)嘘だと思うなら→American Heritage Dictionary のstationを聴いて下さい。’station’のtionは、’shun’ (避ける)と同じ発音です。全く「ショ」とは言っていません。そもそもアメリカ英語には ‘shown’ /ʃoʊn/ つまり「ショウン」という発音はあるけど、「ション」という発音そのものがありません。「オウ」/oʊ/ はあるけど「オ」*/o/ 単独は無いのです。
● connection /kə.nék.ʃən/ (つながり)
これも「コネクション」ではなく、/ə/をちゃんと読んで、「カネクシャン」です。嘘だと思うなら→American Heritage Dictionary のconnectionを聴いて下さい。前述の通り、アメリカ英語に「オ」単独は無いので、「オ」を単独で発音している場合は全て間違っていると思って下さい。
● holiday /hɑ́ː.lə.deɪ/ (祝日)
これも「ホリデイ」ではなく(Lの発音を意識してる人は、結構いますが)、アメリカ英語ではちゃんと発音記号通りに、「ハーラデイ」です。嘘だと思うなら→American Heritage Dictionary のholidayを聴いて下さい。「リ」とは全く言っていません。日本の辞書だと、ジーニアスのような職人のこだわりを感じる一部の辞書や、一部の中学の英語教科書でも一部の単語にはこだわって(なぜか全ての単語ではない)/ɑː/という記号を使っていますが、日本のほとんどの辞書や教科書は/ɑ/で、点々がありません。でもこれは単なる表記の違いで、アメリカ英語では/ɑː/でも/ɑ/でも同じ音で、「あー」と伸ばします。
● Maryland /mér.ə.lənd/ (アメリカのメリーランド州)
これもアメリカでは「メリーランド」ではなく、「メラランド」です。ただしRとLに注意です。嘘だと思うなら、Cambridge DictionaryのMarylandのアメリカ英語を聴いてみて下さい。これはアメリカの地名なので、イギリス発音ではなく、アメリカ発音の方が本物だと言っていいでしょう。
このように、/ə/についての最大の問題点は、99%の日本人が、辞書や教科書に/ə/と書いてあるにも関わらず、それを無視してつづりをローマ字読みしてしまっている点です。
もちろん、日本人式の発音に慣れてしまっていると、なかなか/ə/を「あ」と読む勇気が出ませんが、ネイティブの発音をよく聴いて、「ああ、本当にネイティブは「あ」と発音してるんだ」と確認することで、だんだん勇気が湧いてきます。ルールそのものは超簡単!あとは勇気を持つこと、メンタルの勝負です!おそらく、/ə/の記号には気づいていて、本当は「あ」と読むことを知っているけど、どうしても勇気がなくてあえてローマ字読みしてしまっている人もいるはずです。つまり結局はメンタルの勝負につきます。頑張って下さい。
最後に、/ə/ の記号の名前は、’schwa‘ /ʃwɑ́ː/ 日本語ではシュワーと言い、/ʌ/はよく ‘caret‘ /kér.ət/ と呼ばれます。/kér.ət/ にもシュワーが出てきますが、’caret’ と ‘carrot’ (人参)はどちらも /kér.ət/ で全く同じ発音です。嘘だと思うなら→caret と carrot の発音を聞き比べて下さい。
中級編、上級編も書いていきます。