英語の教科書からローマ字表を無くすために2:ローマ字を学ぶメリット2点!

前回、英語の教科書からヘボン式ローマ字を無くすために1という記事を書きました。その続きです。

(英語の教科書によくローマ字表が載っていますが、ヘボン式も訓令式もローマ字は国語/日本語の時間に扱うべきであり、英語の時間に持ち込むべきではないと、英語発音技能検定特級合格者のミーティングで満場一致で合意に至りました。)

 

一方で、国語の時間にローマ字を学ぶことで、英語に限らず外国語を学ぶ時に、有利になる点が2つあります。今日はそれを挙げます。

 

①ラテン文字、つまりローマンアルファベットの見た目に慣れる

例えば韓国語やアラビア語は、見慣れない文字なので、日本人学習者としては、ビジュアルのハードルが高くなります。

例)

韓国語 → 한국어
アラビア語 → العربية

 

一方ラテン文字に慣れてるおかげで、英語、フランス語、アジアならベトナム語や、中国語の漢字の読み方を書くピンインというラテン文字のビジュアルに抵抗が無くなります。これが大きな強みです。

例)

英語 → English
フランス語 → français
ベトナム語 → tiếng Việt
中国語(ピンイン) → zhōngwén

 

例えるなら、日本語で漢字を使うので、
中国語を習う時に漢字のビジュアルに抵抗が無いのと同じ
です。
中国語の漢字の読み方は日本語と全く違いますが、それでも漢字のビジュアルになれていない他の外国人中国語学習者に比べて、
日本人はリーディングではかなり有利です。(漢字は表意文字なので、同じ表音文字という状況より、有利さはさらに上がります。)

例) 以下の中国語

我的车是丰田。 (私の車はトヨタです。 ※丰田はトヨタ。前回の記事も参照。)

中国語を知らなければ初見では全くわからないにしても、日本語訳を見れば、イメージはつかめるのではないでしょうか。

 

ただ、同じラテン文字でも読み方は言語によって全く違うので、
例えば中国語の以下の単語の読み方を、言語ごとに読むと、以下の発音記号のようになります。
※発音記号ではわからないという人は、下の動画を見て下さい。

cèzi 册子 (パンフレット)

日本語式の読み方 [se.ʥi]
英語式の読み方 [siː.zaɪ]
中国語式の読み方 [ʦʰɤː. ʣɨ]

※中国語の音声表記はFon, J. (2020)を参考にしてますが、日本人にわかりやすいように私が[ ː ]の記号を加えました。

このように、同じ文字を使っているだけで、読み方は3言語とも全く違います
でも、文字に慣れてるだけで随分楽なので、それでいいのです。

 

②音素文字に慣れる

日本語のひらがなやカタカナは、言語学ではsyllabaryという、シラブル文字に分類されます。
シラブル、つまり拍は、その言語の基本単位で、母語話者はそれが1つの音だという感覚がありますが、

例えば「さ」は、ローマ字で書くと、sa
1つの音ではなく、子音と母音に分かれているとわかります。

「みゃ」なら、ローマ字では、mya
このように3つの音素があり、発音も m y a という3つの動作(分節音)をつなげていることがわかります。

このように、ローマ字で書くと音素に意識が向きます。
もちろん音素と文字が必ずしも1対1で対応してるわけではありませんが、
音素に対する気づきがあるのがポイントです。

しかも、音素文字に慣れるというのが、
ローマンアルファベットだけでなく、他の音素文字の言語を習う時にも、有利になります。

 

以上の2点を国語の授業で指導してもらうと助かります。

外国語科目と国語などのような、他教科同士の連携が大事だと言われるようになっているので、
上記の2点を、国語の時間に、ローマ字を教える時に教えてもらえると、外国語教員としては助かります。

もちろん現実は、時間内にカリキュラムを終わらせないといけないので、どこまで組み込めるかという問題はありますが。

 

連携とは言っても、国語の先生が英語のフォニックスを知っている必要は全くありません。
ローマ時はローマ字で、国語の時間に完結させる。
同じように、国語の先生は漢字を教えますが、中国語を知っている必要はないわけですから

さらに言えば、英語の先生は、日本語のローマ字の諸事情を知らなくても良いのではないでしょうか。
「ヘボン式、訓令式って何?」という感じでかまわないでしょう。
中国語の先生が、日本語の常用漢字、当用漢字などの諸事情を知らなくて良いのと同じです。

もちろん、複数の言語を知っていれば、指導の幅は広がりますが、必須ではないでしょう。

 

まとめ

確かに国語の時間に日本語のラテン文字表記をしっかり習えば、外国語学習に役立つのは事実でしょう。
しかし、ローマ字を英語の授業に持ち込むのは、また別の話です。

英語のフォニックスや発音指導に熱心な先生方は、
英語の教科書にローマ字の表を載せることをやめてほしいと、切に願っています。

 
↓そのことをこちらの動画でも説明しているので、12:20くらいから見ていただければと思います。

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