ローマ字の提案:母音(長音)の表記 各表記のメリットデメリット
前回ローマ字の子音の書き方を提案しましたが、
ローマ字の長音の表記にはかなりのバリエーションがあるので、統一した方がいいという人は少なくありません。以下の表記はどうでしょうか?
とうきょう → Toukyou おおさか → Oosaka
ローマ → Rooma
えいが → eiga おねえさん → oneesan
ケーキ → keeki
このように、aiueoをそのままひらがなにあてはめるのはどうでしょう?
「ー」に関しては、前の母音字をそのまま繰り返せばいいでしょう。
※実際うちの近所の大谷さんは、表札をOhtaniではなくOotaniにしています。
●メリット
→ローマ字はかなからラテン文字への転写が目的なので、
ひらがなとローマ字の1対1の対応が一番簡単。
→以下に挙げるバリエーションの弱点を補える。
●デメリット
→字数が増える。
→既にTokyoが英語でのオフィシャルな表記になっている。
他のバリエーションでは、特にオ段長音を、
ō, ô, oh, oがありますが、それぞれのメリットデメリットを挙げてみましょう。
▲ā, â, ī, î, ū, û, ē, ê, ō, ôといった補助記号を付けるタイプ
●メリット
→字数が少なくてすむ。
→見た目が一番かっこいい。←主観です
●デメリット
→パソコンやスマホでタイプするのが難しい。普通のキーではタイプできない。
現在のスマホやパソコンだと実用面でこれは結構致命的だと思います。
→かわいい → kawaīではなくkawaiiのように、イ段だけルールが複雑。
→「横尾さん」はYokooとなるなど、ルールが複雑。「菅生(すごう)さん」はどうするか?
→そもそも日本語の長母音は、音韻的には「同じ母音の連続」ではないか?他言語の”本当の”長母音とは振る舞いが違うので、長音と扱っていいのか?
→「日本語の母音は長母音か母音連続か?」の記事も参照
→ひらがなの「おう」「おお」などの表記の区別を表せない。これらをひらがなに復元できない。
▲ah, ih, uh, eh, ohのようにhを使うタイプ
●メリット
→Ohtaniなど既に固有名詞で定着しているものがある。
●デメリット
→ハ行の前で、伸ばすのか「っ」なのかわからない。
Ohhiraは「おおひら」とも「おっひら」とも読めてしまう。
Bahhaは「バッハ」とも「バーハ」とも読めてしまう。
※「っ」+ハ行はゴッホなど外来語にはあるが、和語漢語にはほぼないので、下記の「小野」「大野」→Ono問題ほど致命的ではない。
→hの役割は/h/子音1つにした方が簡単。そもそもなぜ長音でhなのか?
→ā, â, aに比べて字数が増える。
→ひらがなの「おう」「おお」などの表記の区別を表せない。
▲長音でもaiueoにして短音と区別しないタイプ
●メリット
→字数が少なく、一番シンプル。
→パスポートの名前表記で既に採用されている。
●デメリット
→長音と区別ができない。個人的にはこれは結構致命的だと思います。
「小野さん」も「大野さん」もOno
「ゆきさん」も「ゆうきさん」もYuki
→「横尾さん」はYokooとなるなど、ルールが複雑。「菅生(すごう)さん」はどうするか?
→ひらがなの「おう」「おお」などの表記の区別も当然表せない。
▲「おう」「えい」もoo, eeとつづるタイプ(例 Tookyoo)
●メリット
→「おう」か「おお」か、「えい」か「ええ」かで悩まなくてすむ。
→自然な発音に忠実。
●デメリット
→ひらがなと書き方を変えてしまうと、逆に紛らわしいかもしれない。
→ひらがなの「おう」「おお」などの表記の区別を表せない。これらをひらがなに復元できない。
→「おう」「えい」をオウ、エイと発音することもあるので、必ずしも発音に忠実とも言えない。
ところで「小野さん」も「大野さん」もOno、「ゆきさん」も「ゆうきさん」もYukiとなるつづりは、これらの発音の区別や聞き分けができない、英語話者などの外国人の発想に見えます。しかし、外国人が発音できない発音は表記しない、というのはあまり良くないのではないでしょうか?
なぜなら、「下手」と「減った」のような「っ」の有無も、英語話者を含む多くの外国人は苦手ですが、「お」と「おお」の表記を区別しないなら、「下手」も「減った」もhetaとつづることになってしまいます。
英語話者などが「つ」と「す」の区別が苦手だからといって、「鈴木さん」も「都筑さん」もSuzukiとつづることになってしまいます。
このように外国人が区別できない発音をどんどん表記しないようにしてしまうと、逆に読みづらくなってしまうでしょう。
逆に、日本語話者、韓国語話者、スペイン語話者は、英語のBとVの区別が苦手です。特にスペイン語母語話者は4.9億人もいると言われます。だから、英語でもBとVの表記は区別せず(発音は区別する)、例えばVancouverをBancouberとつづる(発音はVのまま)と言ったら、ちょっと違うのではないか?と思うでしょう。
また、「大野」をOonoとつづると、英語話者はウーノウ [uːnoʊ]と読むから、という意見がありますが、それを言うなら、Maikoはメイコウ [meɪkoʊ]と読まれてしまうので、oo以外の読み方もどうにかしないといけなくなってしまいます。
そもそも英語ではaはアではないし、iはイではないし、oはオではありません。英語を考えるとすると、そこから直さなければいけなくなってしまいます。
→詳しくは「英語のフォニックスの説明」をご覧ください。
もっとそもそも論ですが、日本語を知らない外国人は母語に無い音や音の組み合わせを発音できないので、外国人に正しい発音で読んでもらおうという希望は、捨てた方が現実的でしょう。
「ひらがなや漢字は全く読めないが、ローマ字なら文字を認識できるし、とりあえず自己流で読める」というのが大事です。
日本人が韓国語の「평창」を見たら、形を覚えることすらできないが、Pyeongchangと書かれてあると「ピェオングチャングかな?」「もしかしてピョンチャンかな?」と思うことができます。韓国語を知らない日本人にとっては、韓国語の正しい発音は、あまり大事なことではないわけですからね。
つまり、外国語の発音体系がどうか、外国人にできるだけ正しく読んでもらおう、と思うと、どんどんおかしくなってしまうので、ここはあきらめるポイントだと思います。
英語話者がローマ字を実際にどう読むかという話もよかったら見て下さい。なかなか日本人が意図したようには読んでくれないものです。
また、英語の教科書にローマ字を載せないで!国語の教科書に載せて!という記事もご覧ください。
