「発音記号」から「発音リスペリング (pronunciation respelling)」へ

 レモンスクールのゴールの一つは、日本の英語教育で現在使われている(しかし本当の意味で使っている人はほとんどいない)発音記号を、発音リスペリング (pronunciation respelling) に置き換えることです。

私は学会でもこれに関しては何度か発表し、論文も書き、最近では2023年6月3日の、日本音韻論学会春季研究発表会でも発表しました。それに関する記事は、こちらをご覧ください。ここで詳しく述べています。→発音リスペリングの小学校英語での効果検証:中国語教育の応用〜2023年6月3日(土)の日本音韻論学会春季研究発表会にて。「フォニックス」に関しては、もう結構前から注目を集めています。そして「発音リスペリング」という言葉も、検索すると結構出てくるようになり、嬉しい限りです。

フォニックスと発音リスペリングはどう違うのか?

●フォニックスは、つづりと音の対応です。本来はリーディング力を上げるためのもので、発音のためのものではありません。例えば、cakeのようにサイレントEがあったらどう読むとか、waterのようにaはaでもwの後ではどう読むとか、そういうルールを扱います。

●発音リスペリングは、読み通りのつづりです。日本語でいう漢字のふりがなにあたるものです。フォニックスで対応できるのは、色々説がありますが、だいたい8割弱くらいと言われ、2割強の単語は、フォニックスを覚えても読めず、単語ごとに覚えるしかなくなります。外来語などは最たる例で、例えばcliché(ありふれたもの)の読み方を書く時に、ネイティブはclee-shayと書いたりします。これが発音リスペリングです。(詳しくはミナ表

 日本人にはあまり馴染みがなく、「このclee-shayが読めない!」と思う人も多いと思いますが、ネイティブが難しいつづりの読み方を書く時に、日本語のひらがなのような感覚で使うものが発音リスペリングです。ネイティブは発音記号なんて使わないのです。これを是非とも日本の英語教育に導入したいと思います。

私は決して発音記号を毛嫌いしているわけではなく、むしろ誰よりも発音記号を愛しているからこそ、日本の英語教育で発音記号が正しく使われていないことが耐えられないのです。それならばいっそのこと、発音リスペリングに置き換えた方が断然良いでしょう。また、発音記号そのものを否定しているのではなく、特に日本の英語教科書なのでの発音記号の使われ方が問題なのです。(拙著「中学英語教科書の発音記号に関する音声学者の混乱の調査:発音記号の見直し.」でも書きました。)いずれは、何としても文科省の方達と接点を持てるように、この運動を続けていきたいと思います。

一方、「いや、どうしても発音記号が良い!発音記号を改善して、残すべきだ!」という方がいたら、それはそれで良いと思います。もちろんあくまで現状の発音記号の問題点を理解した上で、前述の発音リスペリングの小学校英語での効果検証:中国語教育の応用で挙げた発音リスペリングの優位性なども理解した上で、「それでも発音記号がこれらの問題をクリアすればいいだけの話だ!俺は発音記号にこだわり続ける!」という方がいれば、それはそれで大歓迎です。そういう勢いのある方が出てきてくれると、日本の英語教育や音声学も、熱くなって面白くなるんじゃないでしょうか。あまり熱くなりすぎて、地球温暖化をさらに進めてしまっては問題ですが。。。(笑)

 

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作者:副代表・野北明嗣

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