「もったいない」の反対は「もったいる」?子供と大人の言語獲得の違い

 子育てをしていると、語彙の獲得が、第一言語獲得と第二言語獲得で、かなり違っているなあとつくづく思います。

 大人とか学生が、外国語を学ぶ時は、「こんにちは」「ありがとう」などの、あいさつを初期段階で習うでしょう。外国人日本語学習者もそうだと思います。

 幼児の場合は、まずそういう長い単語を発音できないという音韻的な制約もあって、日本語なら2拍の単語が多いですね。

  

 そしてだんだん「ママいなーい(涙)」とかの2語文を最初に覚えていきます。助詞なんて入れることはできません。一方、外国人日本語学習者が初期に習う、これに相当する文は、「ママがいません。」でしょう。外国人学習者にとって「ママいない」はもっと学習の後の段階ですが、日本人には逆に「ママがいません。」を学ぶのは何年も後になりますよね。外国人日本語学習者は、動詞を覚える時、活用を覚えやすいことから「食べます」「飲みます」「開けます」というます形から入りますが、日本人の幼児は、最初は動詞を活用なんてさせませんし、ます形だと長くて発音が大変なので、「食べる」「飲む」「開ける」といった終止形/辞書形から言い始めます。

 一見外国人学習者の方が、既に言語を1つ以上獲得していて、年齢も高いので、高度な単語や文法や発音を初期段階で習うように見えます。ところが実はそうでもありません!

 日本人の幼児は、男の子だと1歳の時に「ゴミ収集車」などそれなりに難しい単語を知っていたりします。「ゴミ収集車」は、外国人日本語学習者が初期段階で習う単語ではないでしょう。うちの息子は確か2歳の時には既に、「まもなく、一番線に、電車が参ります。危ないですから、黄色い線までお下がり下さい。」「次の電車を、ご利用ください。」「バックします。ご注意下さい。」「次の方どうぞ。」というような、敬語を使っていました。もちろん本人に敬語という自覚はないでしょうが。「ママの方どうぞ」などという間違った使い方もしていましたが。

 そして3歳くらいになると動詞も活用させます。どうやら最後の「る」をつけると肯定、「ない」をつけると否定、というパターンを考えているようです。

 息子が、泡のハンドソープで遊び出して、大量に使いだしたので、「もったいないから!」と言ってやめさせようとしたら、「もったいる!」と言い返してきて、もっと遊ぼうとしました。これは面白いなと思いました。

 私が高校生の時も、友達が「やむをえない時は、、、」と言ったら、先輩から「今のはやむをえる!」と一蹴されました。これも同じパターンですね。

 

 非母語の語彙も、幼児は違いますね。息子には外国語もやらせたいので、英語の動画を見せたりしてますが、最初に覚えた英語は、

The people on the bus go up and down. Up and down. Up and down. The people on the bus go up and down. All through the town.

という子供の歌の歌詞です。単語として覚えたのは、excavator (ショベルカー), fire engine (消防車), garbage truck (ゴミ収集車)あたりです。やはり、小中学校の英語の授業で最初の頃に習う単語ではないですよね。

センテンスとしては、The local train bound for Takao will soon arrive on track number 1. (まもなく1番線に、各駅停車高尾行きが参ります。)あたりも、もう少しで言えそうですが、小中学校の英語の授業では習わなそうです。

ちなみに、The rapid train bound for Tokyo(快速東京行き)は、rapidの発音ができないのか、言おうとしません。

 うちの息子は一応中国人とのハーフなので、中国語もできるようになってほしいのですが(今はモノリンガルです)、

中国語も「倒车,请注意!」(バックします。ご注意下さい。)と言ったりして車で遊んでいます。やはり中国語学習者が初期に習うフレーズではないですね。

 

 このように、幼児は結構初期段階で、難しい単語を覚えるものですね。趣味に偏っていて、実用性はなさそうですが。。。

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